どんな金属も、美しく磨き上げられていればそれは光を放ち、輝く物体となる。そして輝きを生み出した手間と技に対して尊敬が与えられ、対価が支払われる。
時計製造の長い歴史の中で様々な研磨技法が研究され用いられてきたが、その中でも最も美しく時計を磨くことができるのが「ザラツ研磨*」である。その「ザラツ研磨」に適した時計のデザインとはどのようなものかを考えた。単純な平面と2次曲面で構成される形状は、無理なく処理を施すことが可能である。「面」がかたまりを構成するこの立体は、美術教室に飾ってあった「大顔面」という名の彫刻像を思わせる。
*ザラツ研磨
「ザラツ」は使用する機械の名前に由来する、鏡面研磨の技法のひとつ。材料を取り付けたアタッチメントを、研磨剤のついた平らな回転板に対してあてることで磨くため、凹んだ曲面や三次曲面はこの仕上げには向かない。非常に高い技能を要し、仕上がりの鏡面性と輝きは比類がない。材料を研磨板にあてる際の動きは円周運動、直線運動が基本で、ひと続きのスムーズな動作で操作できることが美しい鏡面作りには不可欠。 |
|
 |
|